ヒーローズカップ関東大会 川崎市ラグビースクール戦マッチレポート

グリーンクラブRS6年生は12月21日、東京・駒沢公園第二競技場で行われた第18回大樹生命ヒーローズカップ関東大会で川崎市RSと対戦し、20-15で勝利を収めた。

前半から激動の展開!連続トライでリードも宿敵の反撃

独特な緊張感が場内を支配する中、試合は始まった。均衡はすぐに崩れた。

開始2分40秒、懸命に繋いだボールがグラウンドの右隅でエース大林の手に渡る。閃きとともにアングルを大きく逆側に切り、まるで舞いを踊るかのように相手6人をかわし、トライを決めた。大林は止まらない。今日は完全に乗っている。天性のトライゲッターとしての第六感が研ぎ澄まされ、チームが勢いに乗る。

続く4分、スクラムからボールを受けたキャプテン飯島が斜め前に力強く仕掛ける。同時に、飯島の目線がアタックライン方向へ。その視線に応えるべく、もう一人の共同キャプテン、河嶋が巨体を揺らし、トップスピードで走り込む。相手ディフェンスは慌てて2人がかりで立ちはだかるが、飯島から放たれたボールは河嶋の背中をすり抜け、裏から走りこむ福井に渡る。完全に相手の裏をかくサインプレーだった。福井は相手ディフェンスを引きつけながら冷静にラストパスを出す。そのボールを受け取ったのはエース大林。カバーディフェンスの壁を巧みにかわし、インゴール左隅に豪快にグラウンディング。痛めていた右手を天高く突き上げた。2本連続トライに、ベンチや観客席のボルテージは最高潮に達する。行ける。今日はグリーンが完全にペースを握っている。

トライ後に雄叫びをあげる大林

川崎市ラグビースクール。彼らは今年に入って何度も対戦を重ねてきた宿敵だ。戦う度に最後の最後で逆転負けを喫してきた。コーチングスタッフ、そして選手の心には、苦い思い出が鮮明に刻まれている。

川崎は連続攻撃から強力なランナーを投入してくる。その攻撃力には、一目置くべきものがある。前半11分、川崎がようやく反撃の狼煙を上げるトライ。流石の好敵手だ。油断すれば、瞬く間に得点を許してしまう。関東大会は、そんな甘い舞台ではない。

前半終了間際、流れをもう一度掴みたいグリーンにチャンスが訪れる。相手のミスから得たセンタースクラム。右サイドにはスピードスターの福井と茂木。左サイドには飯島、河嶋、そしてエース大林のフィジカルなメンバー。監督を務める福井は、この場面を振り返りこう語る。「どちらのサイドを選択しても、取り切れる自信があった。判断は選手たちに任せた。」その言葉の通り、スクラムハーフの梶原は左右を見渡しながら、どちらに展開しても突破できる自信を持っていた。梶原が選んだのは左サイド。河嶋の動きに相手ディフェンスが集中し、防御網に歪みが生まれる。そのギャップに飯島と大林が走り込む。インゴール目前に迫るが執念のタックルを浴びラックが形成された。ラック最後尾に闘争心剥き出し男が構える。「ゴール前になったら必ずトライを奪う、それが自分の役割」そう決めていた河嶋だ。川崎の低く鋭いタックルを浴びながらも身体をインゴールに捩じ込んだ。まさに気迫のトライ。最高の形で前半を締め括った。

何度もゲインを重ねた河嶋

後半は激動のドラマ!ターンオーバーで勝ち香るも怒涛の反撃、ラストプレーで掴んだ歓喜

後半に入り、秋山がピッチに降り立つ。彼は1週間前、インフルエンザで休養を余儀なくされていたが、準備は怠らなかった。ボールを持てば全力でぶち当たり、ブレイクダウンに頭を突っ込み続けた。

敵陣ゴール前、川崎ボールのスクラム。キーマンのセンターにパスが渡り、力強く縦に突破を試みる。その前に立ちはだかったのは、チームNo.1のハードタックラー、石原。小柄で寡黙な男。強烈なタックルで、相手を地面に叩き伏せる。稲妻のような一撃だった。石原は立ち上がったかと思うと、目の前の敵に更にもう一発稲妻を放った。すかさず河嶋が反応し、ブレイクダウンを押し込む。まるで波のように押し寄せる河嶋の圧力。途中出場の秋山も加わり、ラックの制空権を奪う。スクラムハーフの梶原は目の前に現れたボールを、ただ地面に置くだけだった。渾身のターンオーバーからのトライに、寡黙な男石原は遠慮がちに小さく喜んだ。グリーンメンバーの頭に「勝利」の2文字がよぎる。

ここから川崎の怒涛の反撃が始まる。これまで完全に制圧していたはずの密集戦でリズムが崩れ、何度も反則を取られた。楕円の神の心は、徐々に川崎に傾き始める。

立て続けに2本トライを奪われる。原因は明白、規律の乱れだ。

ラグビーを始めてまだ6ヶ月の齊藤は完全に我を見失っていた。これまでの試合では、ルールを理解しきれないが故に、密集でボールに絡めなかった。しかし、ものすごいスピードで成長を続ける齊藤は、この試合では果敢にボール奪取を試みる。「齊藤にとって勇気ある挑戦だった」とコーチ陣は振り返る。初めての公式戦先発出場。自分が犯した反則に肩を落としながら齊藤はピッチを退いた。しかし、怪物の片鱗を見せる突進、相手をなぎ倒す強烈なタックル。観客席にいる関係者の目に彼の勇姿は深く刻まれた。ベンチに戻った最強の素人に、暖かな拍手が送られる。

齊藤の代わりに出場した廣瀬。短い出場時間で自分の役割を果たすと心に決めていた。ファーストタッチで力強いボールキャリーを見せ、観客席を沸かせる。

時間が気になる。コーチ陣は何度も時計に目をやった。1分がとても長く感じる。「頼む。早く終わってくれ。」試合ビデオを撮影していたコーチの秋山は思わず声が漏れる。

その時は遂にやってきた。ラストワンプレーを告げるフォーンがグラウンドに鳴り響く。キャプテンの飯島は強く、そして確実にボールを外に蹴り出した。歓喜の瞬間。全員で掴んだ渾身の勝利に選手は輪を作り、お互いを称え合った。多くの応援が駆けつけたスタンドからは、熱戦を繰り広げた両チームに対して大きな拍手が送られた。強敵川崎市RSから学ぶ事が多かった。この戦いを通してチームは確実に成長を遂げた。

全国まであと1勝。「次も絶対に勝つ」会心の勝利のあと、選手の目は既に次を見据えていた。

勝利の瞬間

スタンドからは大声援が送られた

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グリーンクラブ事務局